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プロレス写真の撮り方 (カメラ初心者~中級者向け)


 まとめると……

 ・新しい機種でシャッタースピードが設定できる機種が撮りやすい。ポートレートを撮りたければ望遠ズームができる機種がおすすめ。高価なカメラやレンズじゃなくても大丈夫。
 ・試合中はシャッタースピードを速めに(1/200~1/500秒位)。ポートレート狙いなら遅めでも撮れる。
 ・シャッターチャンスは試合中の他にもたくさんある。

※このページの画像は、クリックすると大きいサイズで見られます

プロレス写真の撮り方


プロレス人気復調!

写真撮影OKというプロレス団体や興行が増えている。会場にはスマホやデジカメで写真を撮っている人が多い。ツイッターやブログなんかでかっこいいプロレス写真をアップロードしてる人もいる。

自分も撮ってみるけどうまくいかない。プロレス撮影って意外と難しいのだ。プロレスの撮影方法を解説しているサイトも少ないみたいで、試行錯誤するしかなかったりする。

iPhoneで撮ったり、コンパクトデジカメで撮ったり、一眼レフカメラで撮ったりする中で、コツがあることに気づいてきた。素人なりに「プロレス写真の撮り方」について書いていこうと思う。




色々なプロレス写真

プロレス写真と聞いて思い浮かべるのはどんな写真だろうか?

試合中の写真や選手の顔写真、会場の写真や選手自身が撮影したオフショットを心に描く人も多いだろう。他にも雑誌やカードを写したものだったり、選手のサインの写真だったり、すべてがプロレス写真と言える。

人気選手は華がある

記録的な写真や芸術的な写真、記念写真的な等、色々な写真がある。

会場に行った時も難しく構えず、写真を撮りたいと思った時に気軽に撮影をしてみると楽しいと思う。

きれいだなーと思ったので撮影

試合が始まる前の会場

鍛えられた筋肉、デスマッチファイターのキズ、そしてこの剛毛……選手の体に注目するのも面白い

試合中に技をかけた瞬間

表情に注目したポートレートを撮る人も増えている

気軽に撮影してみて、もっと撮り方を知りたいと思った時には誰かに聞くか検索するといい。このページでは主にプロレス会場での撮影について説明している。


プロレス撮影は難しい?

気軽に…とは言ったけど、プロレス撮影は難しい!と思う。

最近のデジカメは、オートモードが充実。スポーツ用撮影モードを使えばプロレスもうまく撮れそうな気がする。けどオートだと中々うまくいかない。

インターネットで調べると、「スポーツ写真はシャッター速度を1/2000秒位に設定すれば問題無し」なんて書いてあって、その通りにしてみるけど思い通りに撮れない。

暗い。動きが速いので被写体ブレする。席によってリングまで遠い……等々、撮影するには難しい条件が揃っている。

「週刊プロレス」だとか「東京スポーツ」みたいに試合中の写真をかっこよくきれいに撮るのは難しいと思う。ただ、シャッターチャンスはわかりやすいし多い。センスがなくても、それなりの写真が撮れることがあって楽しいのだ。

筆者が初めてプロレスを撮った時の写真。手ブレ、被写体ブレ、ピンボケ、タイミングが変……。
こんな感じになる人は多いと思う。これでもいいけど、予算と工夫次第でもっといい写真も撮れる。



プロレス撮影に向くカメラ

仕事で撮影してる人はキヤノンかニコンの一眼レフばっかり。
趣味で撮るならもっと多くの選択肢がある

プロレス観戦に向いているカメラは、自分が撮りたい写真によって色々。カメラの性能もどんどんよくなっているので、高価なカメラが絶対に必要!ということはない。

暗いところに強いカメラがいい。暗いところでの撮影がしやすいことを「高感度性能がいい」とか「高感度に強い」と言うことがある。高感度に弱いカメラだとノイズでザラザラした印象の写真になることが多い。この点は新しい機種ほど有利。カメラの高感度性能については技術の進歩が速いみたいで、新機種が出るたびにメーカーは「高感度域の画質」だとか「ノイズリダクションの向上」をウリにしている。迷ったら最新機種の中から予算やスタイルにあったものを選ぶといい。

シャッタースピードを設定できるカメラだと、試合中の写真が撮りやすい。(後述)

連写できるカメラも、動きが激しい場面の撮影では役に立つ。

ズームができると便利。ネオ一眼と呼ばれる高倍率ズームがウリのコンデジも会場ではよくみかける。

iPhone等のスマホのカメラの場合でも、新しい機種なら暗いところで強い。シャッタースピードの設定は専用のアプリが必要。プロレス撮影に向いているとは言えないが、試合中でもタイミングに注意すればそれなりに撮れる。

画質のよさなら一眼レフカメラ。

twitterやfacebook等のSNSやブログにアップしたりメールで送りたいという人は、スマホのカメラが一番。またコンデジを中心にスマホとの通信機能を備えた機種が増えている。


カメラ本体の他にあると便利なものもある。

機種にもよるが、長い興行でずっと撮っているとバッテリーが足りなくなることがある。たくさん撮る場合は予備のバッテリーがあると安心。

連写を多用するとメディアがすぐにいっぱいになる。予備のメモリーカードもあると安心。

撮った写真をすぐにSNSやブログにアップしたいけど、カメラが通信に対応していない場合もある。必要なら専用のモバイルアダプターか、通信に対応したメモリーカードを用意するといい。


プロレス撮影に向かないカメラ

古いカメラはプロレス撮影にはあまり向いてない

プロレス撮影に向かないカメラもやっぱりある。

古い機種は暗いところでノイズが多くなることがある。

古い機種の場合、撮影した後の処理に時間がかかる場合もある。1枚撮った後に処理に時間がかかって次の写真が撮れず、シャッターチャンスを逃したりする。また一般的に、転送速度の速いメモリを使うとよいとされ、転送速度が遅いメモリは向かない。連写を多用するならなおさら。

古いスマホや古いガラケーのカメラは難しい。もともと手振れしやすい上に、暗いとシャッタースピードが遅くなるのでさらに手振れしやすい。画質もいまいち。

使い勝手がよくないカメラは難しいかも。例えばSIGMA DPシリーズは画質もよくていいカメラだけど「撮影する場面を選ぶ」等と評される。使えなくはないけど不便。

シャッタースピードが設定できない、オートしかないカメラの場合、試合中の速い動きを撮る事は難しい。動きの少ない場面を狙って撮るなら十分使える。

室内スポーツの定番、ハイエンド一眼レフカメラ+大口径望遠レンズは、予算以外にも問題がある。プロレス会場の狭い席では非常に使いづらいと思われる。Canon EOS-1D X や Nikon D4Sにデカい大口径望遠レンズを付けたりしたら、カメラもデカいしシャッター音もデカい。画質や機能はいいけど、満員の後楽園ホールなんかで使うのは度胸がいると思う。すいてる興行ならかなり使えると思うけど。

iPad等のタブレット端末にもカメラがついているけど、プロレス撮影にはむかない。手を伸ばして上に上げて撮る場合は後ろの席の人の邪魔になってしまう。


プロレス撮影に向かない機材もある。

三脚や一脚も向かない。三脚を設置できるスペースが無い。主催者が三脚を使って動画撮影をしていることもあるけど、観客席からはまず使えない。持ち込まないのが無難。会場や席によっては一脚は使えるかもしれないけど、使用しない前提で考えるといい。プロレスバーやビアガーデンプロレスでは、卓上三脚のようなミニ三脚ならテーブルに置いて使える可能性がある。

クリップオンストロボ等の外部ストロボは、記念撮影会などがあれば使えるかもしれないが、試合中はあんまり使えない。リングサイドでなければ光は届かない。他のプロスポーツでは、競技中にはストロボ・フラッシュが禁止されていることもある。一般的な撮影マナーとして、スポーツ観戦時はストロボ発光はしない方がいい。ただ、会場によっては週刊プロレスとかのカメラマンがフラッシュをバンバン使ってたりする。この辺りは空気読んで対応するしかないかも。

ちなみにプロレス団体が公式にストロボ発光を禁止することは滅多にない。DDTプロレスリングの暗闇デスマッチで禁止された、とかの程度。


一眼レフカメラで撮影?

一眼レフカメラも安くなっていきていて、プロレス会場でも持っている人を結構見かける。このページの写真も大半が一眼レフカメラで撮っている。エントリーモデルの一番安い機種でもかなりきれいに撮れる。このページの写真でも使っているNikonのD3200というカメラは2014年1月の時点ではボディ単体で3万円をきっている店もある。後継機のD3300が発表されたということもあって安い。

一眼レフカメラの特徴は、撮像素子(イメージセンサー)が大きいこと。画質がよくボケの大きな写真が撮れる。かっこいい写真が撮れる。また、後述するシャッタースピードの設定ができる。

その他のメリットは、連写が早かったり、オートフォーカスが速かったり。ISO感度を上げても画質が落ちにくかったり。

デメリットは大きくて重いこと。席が狭い時は使いづらい。機種によってはシャッター音も大きかったりして、周りの人の迷惑になることもある。


一眼レフカメラだと5万円程度の機種から、レンズを含めて100万円を超えるものまで様々。高価なカメラの方が撮りやすかったり画質も良かったりということはあるけど、安い機種でも十分撮れるしコストパフォーマンスはエントリー機種が一番高い。最近発売された Nikon D3300 とか Canon EOS Kiss X7i 等は軽いしプロレス撮影でもなかなか使える。「Wズームキット」のように望遠レンズがセットになったものがおすすめ。


試合開始前に準備しよう

会場についたら、写真撮影ができるか確認。撮影OKの興行が多いけど、たまに禁止のときがある。わからなければ受付の人などに聞いて確認しておこう。

写真撮影禁止の場合は、団体のウェブサイトに記載があることが多い。(アイスリボンの道場マッチ、美少年プロレス、…等)

席についたら、カメラの設定をしよう。

連写で撮影するつもりなら設定を連写に。

内臓ストロボ(フラッシュ)はオフに。遠くまではストロボの光は届かないし、選手や周りの人にも邪魔になる。同じ理由で外付けストロボも必要無い。

リングを試し撮りしてホワイトバランスも設定。

ホワイトバランス晴天。黄色い。

ホワイトバランス 白色蛍光灯。

ホワイトバランスは会場によって変える。わからなければオートでいい。

露出も確認しておいて設定を調整しておきたいけど、試合前と試合中では照明が違うのでそこは臨機応変に。

プロレス会場は、リング上に明るい照明が当たっていることが多い。体育館の場合は全体的に暗い。


照明が蛍光灯の場合は「フリッカー現象」という問題が出てくる。




ホワイトバランス 晴天。シャッタースピードは1/400秒。どちらの写真も設定は同じだけど色が全然違う。原因は蛍光灯。フリッカー現象と呼ばれる。シャッタースピードを遅くすることで対策できるけど、プロレスでは難しい。フリッカー現象は仕方がないので、連写などで何枚も撮るのがいいかも。蛍光灯の会場に行く事が多いなら、CANON EOS 7D Mark II のようなフリッカーレス機能のついたカメラを用意するのもいい。


RAWで記録できるなら、現像する時に調整してもいい。

交換レンズも持っているなら、試合前にどのレンズを使うか決める。興行が始まってからは、レンズ交換は難しい。席は狭いし隣の人にぶつかったりするので、休憩時間以外のレンズ交換は止めておくのが無難。


手ブレを防ぐ撮り方

プロレス写真は手ブレしやすい。

理由は複数ある。会場が室内なのでシャッタースピードが落ちる、試合を見ながら撮影だと興奮している、座りながらの撮影に慣れていない、などなど。
スマホで撮影

上の写真と同じ場面の手ブレ写真

手ブレすると写真の質がガクッと落ちる。あとからの修正も難しい。手ブレには特に注意したい。

手ブレを防ぐ方法を調べると、大きく3つに分類できる。

・カメラの構え方
・シャッタースピード
・手ブレ補正機能のある機種を選ぶ

これらを組み合わせたり、補い合ったりしながら手ブレを防いでいく。以下はそれぞれの解説。

「カメラの構え方」で手ブレを防ぐ

カメラの構え方が大事。試合中だと興奮しているせいもあって手ブレしやすい。

スマホやコンデジは肘を体に密着させる。一眼レフなら脇をしめる。……これらを基本に自分に合った構え方で撮る。また、シャッターを押すときにカメラが動かないようにすること。

三脚を使えば手ブレの心配は無いが、プロレス撮影では三脚はまず使えない。

立見席以外では座った状態での撮影になる。イスやベンチに座った状態で練習するといいかも。


「シャッタースピード」で手ブレを防ぐ

シャッタースピードが遅いと手ブレしやすい。逆にシャッタースピードが速いと手ブレしにくい。

焦点距離によっても違いがあり、広角だと手ブレしにくく、望遠だと手ブレしやすい。

一般的に手持ち撮影だと「1/焦点距離(mm)秒」が目安と言われる。(焦点距離は35mm換算)

スマートフォンのカメラの焦点距離は35mm前後。シャッタースピードが1/35秒より遅くなると手ブレしやすい、という意味。

「1/焦点距離(mm)秒」より速いシャッタースピードを設定すると手ブレが防ぎやすい。

例えばNikon D3300 や D5300 や D7100、Canon EOS Kiss や EOS 7D 、EOS 70D、EOS 60Dなどで焦点距離200mmで撮影した場合、35mm換算の焦点距離がNikonは300mm、Canonは320mm。1/300秒や1/320秒よりシャッタースピード速くすると、手ブレが防ぎやすい。

構え方や手振れ補正機能によって変わってくるけど、基本的な考え方なので覚えておくと役に立つ。

スマホや一部のコンデジではシャッタースピードが設定できないことがある。iPhoneでもiOS8以降なら露出補正で暗く撮ることで、ある程度シャッタースピードを速くできる。

1/1000秒だと超望遠でも手ブレしにくい

「手ブレ補正機能のある機種」で手ブレを防ぐ

カメラやレンズに手ブレ補正の機能がある場合、同じシャッタースピードでも手ブレしにくくなる。

iPhone6やiPhone6 Plusは強力な手ブレ補正を宣伝している。最近のスマホカメラにも手ブレ補正がついている。

新たに機材を用意する場合、手ブレ補正の有無も注意しておくといい。手ブレ補正機能がある機種を使っているなら、特別な意図がなければ手ブレ補正はオンにしておく。




シャッターチャンスはどこ?

プロレスはシャッターチャンスが多い。

選手入場(リング外)

選手入場シーンは撮りやすい。花道を歩く選手は動きが遅いし予測もできる。リング上と比べると照明が暗いので、露出に注意。花道の近くの席なら近くで撮れる。走って入場してくる選手の場合、近くの席だとAFが追い付かずに撮れない事が多い。リングインする瞬間もかっこいい。席によっては全く見えないし撮れないこともある。




選手入場(リング上)~コール

選手入場~コールを受けるところは見栄えがいいし、撮りやすい。

コーナーに立ってポーズを決めてくれると、ロープが邪魔にならない。

投げ込まれる紙テープがきれい。


試合中

試合中はシャッターチャンスだらけ。でも撮るのはコツがいる。特定の選手のファンになって、選手の動きを研究しておくと撮りやすい。

激しい動きの中で時々訪れる、動きが止まったり遅くなるポイントがねらい目。ロックアップの直前とか、ブレーンバスターで持ち上げたところとか、絞め技の最中とか。

打撃や空中技等の動きが速い場面はタイミング勝負。ある程度動きを予測して撮る。カメラによって癖があるので、使っているカメラで練習しておくといい。
コーナー上は選手の動きが遅くなるので意外と撮りやすい



マイクパフォーマンス

試合はしっかり見て楽しんで、マイクパフォーマンスは撮影で楽しむ、といった撮影スタイルもいいと思う。マイクパフォーマンスは動きが少ないので撮りやすい。

選手がマイクを持っている姿は中々かっこいい。


休憩中

長い興行だと途中で休憩が入る。休憩中に選手が近くに来てくれたりする。

休憩中は試合中と照明が違うので、露出に注意。上の写真は暗くなった。

休憩中にリングの準備・調整をしている。デスマッチの準備は面白い被写体。

興行の後の撮影会など

興行の後に撮影会の時間が用意されていることがある。レスラーと並んでいるところを記念撮影してもらえることも。グッズ購入者限定という場合もある。




その他

リングにアイドルが登ることも


リングサイドにいたカメラマンが置いて行った。Nikon D4 とスピードライトSB-910かな





シャッタースピードに注意

シャッタースピードが遅いと、被写体ブレする。
公開オーディションでの反復横跳びの場面。シャッタースピード1/60秒と1/250秒の比較。

シャッタースピード 1/60秒

シャッタースピード 1/250秒


1/60秒だと、動いている選手(この場合はテスト生)が大きくブレている。1/250秒だと動いている選手のブレは小さい。どちらが優れてるということはないけど、プロレス雑誌みたいな写真を撮りたければシャッタースピードは速くしよう。

1/100秒より遅くなると、動きのある場面ではブレることが多い。動きを止めて撮りたければ1/250秒~1/300秒くらいか。1/400秒とか1/500秒位だときっちり止まる。

1/1000秒とか1/2000秒とかにすれば被写体ブレはほぼ防げるけど、ISO感度を上げることになりノイズが増えて画質が落ちる。

使っているカメラによって高感度の時のノイズの出方は違う。低感度で撮れば画質はよくなるが、シャッタースピードを速くしづらい。

シャッタースピードを速くすると手ブレも防げるというメリットもある。

F値の小さい大口径のレンズを使えば低感度でも速いシャッタースピードを得やすい。ただし望遠だと高価でデカい。10万~30万円程度の予算をレンズに使える人には良い選択肢。比較的安価な標準単焦点レンズを使って、後でトリミングするのもいい。カメラの画素数が多くないとトリミングしたときに画質が落ちやすい点には注意。

カメラやレンズにお金をかけない場合は、シャッタースピードと画質のバランスを取りながら妥協点を探すことになる。私は1/200秒程度にして低めの感度を選択することが多い。1/200秒でも動きが遅めの場面ならそれなりに止められる。(※フルサイズの一眼レフカメラを用意してからは、ISOをあげた上で1/1000秒やさらに速いシャツタースピードにすることが多くなった。これについては改めて書く予定。)

コンデジでは、シャッタースピードを選択できないことがある。スポーツ撮影モードにするとシャッタースピードは速くなる。

明るさや構図は、画像編集である程度は修正できるけど、被写体ブレは修正できないということも覚えておくといい。

あえてシャッタースピードを遅くして選手の動きを強調して表現することもできる。プロレス写真をスローシャッターで撮っている人は少ないようだ。


ピントが合ってない!

失敗写真量産!

手前のロープにピントが合ってしまった!

コーナーにピントが合ってる


タイミングは最高なのに……

プロレスを撮ったけどピントが合ってなかった!って人は結構多いと思う。プロレス会場ってピントを合わせたい対象以外の被写体が多い(代表的なものはロープ)。選手の動きも激しい。カメラには動体予測AF(Nikonだと コンティニュアスAFサーボ)なんて機能もあるけど、激しい動きは追い切れない。かといってマニュアルフォーカスで置きピンというのも簡単ではない。D3200のようなエントリーモデルのファインダーは、小さくて暗いのでMFしづらいし、キットレンズには距離指標もついていない。

AFエリアモードをシングルポイントAFにしたり、マニュアルフォーカスで撮影することが対策として考えられる。

絞りを若干絞って被写界深度を深くするというのも対策の一つ。


ボケボケ画像は、小さくするとボケが目立たなくなる。最後の手段。

このくらい小さくするとわからない?(クリックすると大きくなってバレてしまう)


ピントが合うまで時間がかかる

オートフォーカスが迷う。ピントがあうまで時間がかかってシャッターチャンスを逃しやすい。

オートフォーカスでなくてマニュアルフォーカスにしておくというのも1つの方法。コンデジなら無限遠に設定できる機種が便利。ある程度リングから離れているなら無限遠に固定してしまうといい。コンデジはピントが合う範囲が広いこともあり、オートフォーカスよりマニュアルの方が向いている場合がある。

一眼レフカメラでは、ファインダーを覗いての撮影と比べると、液晶画面を使用したライブビュー撮影ではオートフォーカスに時間がかかる。

ピント合わせに時間がかかって選手が通り過ぎちゃった



ピンボケ対策(カメラ選び)

ピンボケしたくないって時はコンパクトデジカメを使うといいと思う。撮像素子が小さいと全体にピントが合う。スマホのカメラもピントが合う範囲が広い。

次の写真はiPhone4sで撮影したもの

手前から奥までピントがあっている。

観戦記ブログを書きたい人とかは、コンパクトデジカメでシャッタースピードを自由に設定できる機種を用意するといいと思う。ミラーレスカメラや一眼レフカメラは、初心者だとピンボケしまくる。

ただし、最近ではイメージセンサーが大きいコンデジも増えている。一眼レフカメラのようにボケが大きいことをセールスポイントにしているコンパクトデジカメもあるので、ピンボケ防止目的で選ぶ時は注意。


ロープが邪魔

プロレス・格闘技の撮影では、ロープが邪魔。そしてコーナーも邪魔になる。これは仕方がない。
タイミングを見計らって顔が隠れないタイミングで撮るか、何枚も撮っておくといい。

顔が隠れた


座る場所が大きく影響してくる。高いところからリングを見下ろすような席だと、ロープは気にならなくなる。



座る場所が大事

リングサイドは楽しいけど……

座る場所で撮れる写真が変わる。席を移動できる興行はあんまり無いので、決まった場所から撮ることになる。

正面だと選手の挨拶や表彰等も前から見れる。(例:後楽園ホールなら南の席)

リングサイドは迫力がある写真が撮りやすいけど、場外乱闘の時はよけたり逃げたりで忙しい。水が入ったバケツを振り回す選手もいたりして、カメラの取り扱いは注意がいる。

あまり後ろの席だと超望遠レンズが必要になったりする。

赤コーナー・青コーナーの近くだと、タッグマッチの時はコーナーで待つ選手のおしりばっかり撮れる。

花道の近くの席で入退場する選手を狙って撮ることもできる。

スポットライトが無い体育館などでは、背景に気をつかう。リングをはさんで反対側に座るお客さんが写りこみやすい。

自分では席を指定できない興行も多い。各会場について自分で研究する以外ないかもしれない。座るところはかなり大事な要素だけど、自分ではコントロールできないこともある。

体育館の2階席から



ポートレート的な写真の撮り方

表情に注目した写真。背景をぼかすと綺麗に見える。

twitter等のSNSで人気なのは、選手の表情を大きく写したポートレート的な写真。
リングに近い席を確保した上で、望遠ズームができるカメラだと撮りやすい。

ポートレート的な写真を撮りたいなら、コンデジなら望遠端が(35mm換算で)200mm以上のカメラがおすすめ。一眼レフなら望遠ズームレンズだと撮りやすい。

シャッタースピードはあまり速くなくても大丈夫。選手の顔が見えるタイミングでシャッターを切る。

背景をぼかして主役である選手をはっきりさせるのが上手く撮るコツ。
望遠側で絞りを開く(F値を小さくする)と背景はボケる。一眼レフカメラなどのセンサーが大きいカメラを使うと背景はボケやすい。

色をきれいに出したい時はホワイトバランスに注意。

一般にポートレート撮影はライティングが重要と言われる。プロレス撮影の場合はライティングは全て会場がやってくれる。逆に言えば自分ではコントロールできない。モデルとなる選手は同じでも会場次第で撮れる写真が全然違う。きれいな写真が撮れる会場もあるし撮りにくい会場もある。

ポートレート撮影は構図が大事。でも試合中に選手を追いかけて構図を決めるのは中々難しい。

なんだか中途半端な構図になった

ライティングが不要、モデルは指示をしなくてもどんどんポーズを取ってくれる。一般的なポートレート撮影と考えれば、あとはシャッター切るだけ。リングに近い席と機材さえあれば撮りやすい部類の写真。

「たくさん撮ればいい写真が撮れる」というのも間違いではない。twitterできれいな写真を投稿している人を見ると、一回の興行で数千枚という大量の写真を撮っている人が多いように感じる。
選手の動きを先読みしておくとうまく撮れることもある

屋外での興行

大日本プロレスの商店街プロレスのように、屋外でプロレス興行が行われることがある。屋根の無い会場だと、通常のプロレス会場での興行とは撮影条件も大きく異なってくる。

まず天候に気をつけること。夏の直射日光とか、寒さとか、雨とか。屋外だと影が強く出たり、完全に逆光になる場合もある。逆光で顔が暗く写るのは席によっては防げない。暗く写る事を前提でRAWで撮ったり階調補正の設定をしておけば、何とかなる場合も多い。

逆光で顔が暗くなってしまう

逆光で顔が暗くなる時は、露出補正をプラスにすれば顔は写る。全体が明るくなって白飛びが多くなる。逆に露出補正をマイナスにして、シルエット写真のようにしても面白い。

後から上の写真を加工した。最初からこのような写真を撮るためにはカメラの露出補正を利用する。


屋外は屋内に比べるとかなり明るいので、シャッタースピードを速くしやすい。低いISO感度で撮れるので画質もよくなる。

晴れた日の昼なら、ISO感度を100~400位にして絞り優先モードで絞り解放にすれば、お手軽に撮れる。設定したISO感度での最速のシャッター速度になる。簡単な設定でそれなりに撮れるのでf5.6やf6.3等のズームレンズを使っている時はこれでもいい。

屋内の場合はリング上と場外で明るさが全然違うけど、屋外だとあまり変わらない。


他のお客さんの顔にボカシやモザイクは必要?

プロレス撮影をしていると、自分の反対側に座った人の顔が映ることがある。

観戦記ブログなんかだと、顔にボカシをいれて写真を公開している人もいる。一方で顔がしっかり写ったまま公開している人もいる。

公開する写真については、特にルールは無いし各団体からも公式な案内は無いので、ボカシを入れるか入れないかは自己判断ということになる。肖像権の点から考えるとボカシを入れるのが無難ではある。ただ、プロレス撮影で大きな問題になったという話は聞かない。(ちなみに日本の法令に肖像権という言葉は無い)



ボカシやモザイクを入れるソフトやアプリは色々あるけど、そもそも他の観戦者の顔を写したくないという人もいると思う。難しい場合も多いけど、客席の人の顔を写さない方法がいくつかある。

基本はカメラの向きやズームによって、客席の人の顔が写らない構図を探すこと。

リング上の照明が明るい会場だと、照明が当たっていないところとの明暗差が激しくなる。客席は暗く写り、客席にいる人の顔はわかりにくくなる。

カメラの階調補正の設定をオフにしておく。そうすると暗いところはさらに写りにくくなる。階調補正はメーカーによって呼称が違う。(例:高輝度側・階調優先、オートライティングオプティマイザ、アクティブD-ライティングDレンジオプティマイザー、ダイナミックレンジ設定、ハイライト/シャドー補正、階調オート、インテリジェントDレンジコントロール……など)

体育館はリング上と客席の輝度差が小さく、どうしても客席に座る人の顔が暗くならない。よって、撮る角度を変えて、客席が入らない構図を探す。可能なら座る場所も工夫する。

被写界深度を浅くして、ぼかすという手もある。絞りを解放にする(f値を最小にする)とピントが合う範囲が狭くなり、客席がボケやすくなる。広角側より望遠側の方がボケやすい。


裏ワザ的なやり方として、意図的に画質を下げるというテクニックもある。画像加工の段階で画質を落とすのがスタンダードだけど、古いカメラを使ったり、ISO感度を極限まで上げてノイズを増やすという方法もある。写したい被写体の画質も下がるのでバランスが難しい。

古いカメラを使用。後ろの人の顔がはっきりとは写らない。



プロレス撮影に向くレンズ

一眼レフカメラではレンズの選択が重要。撮れる写真が変わる。

気を付ける点は、リングや選手までの距離。あとは周りの人の邪魔になるかどうか。狭い席で大きなレンズは使えない。試合中にレンズ交換はしづらい点にも注意。

標準ズームレンズ


エントリーモデルの一眼レフカメラだと、キットレンズとして標準ズームレンズがついてたりする。広角側では広い範囲を写せる。選手の表情など、細かいところは写すのには向いていない。リングサイドだと標準ズームだけでも十分大きく写せるけど、リングの反対側の選手を写そうとすると小さくなる。

ちなみにiPhoneのカメラはやや広角。

望遠ズームレンズレンズ


選手の顔がはっきりわかるくらいに撮りたければ、望遠レンズ。f値が2.8とか2の大口径レンズを薦める人もいるけど、狭い席の場合は邪魔かも。焦点距離が望遠端200mm以上で、カメラがAPS-C機やマイクロフォーサーズ機であれば結構大きく写せる。

リングからかなり遠い席の場合は、テレコンバーターを使うのも一つの手だと思う。

高倍率ズームレンズ

広角から望遠まで、1つのレンズでまかなえる「便利ズーム」は、プロレスでは特に便利。初めて行く会場だと席からリングまでの距離がわからないので、必要な焦点距離がわからない。レンズ交換しづらい環境なので、とても役に立つ。

ただし、画質やAF速度はいまいちで高価で重い……等デメリットも多い。画質がそこそこでいいなら高倍率ズームは使える。

単焦点レンズ


単焦点レンズはf値が小さく明るいため、シャッタースピードも速くしやすく、ISO感度を低めにできるというメリットがある。ズームレンズより画質もいい。絞りをあける(f値小さくする)と背景がよくボケる。画質をよくしたいとか、プロレス写真を作品として仕上げたい、という場合は単焦点レンズが向いている。

ただし客席から撮る場合は色々と難しい。初めての会場だと必要な焦点距離がわからないし、ズームができないので現場での調整もできない。前の席の人の頭が構図に入ってしまう時に、ズームで回避することができない。後でトリミングする前提ならあまり気にしなくても大丈夫。


レンズのf値による違い

暗いところでは、f値の小さな明るいレンズだと便利。ただし値段が高い。単焦点レンズだと比較的安い。

お金をかけたくない場合はf値の大きな暗いレンズを使うことになる。キットレンズに多いf5.6のレンズを使う場合はISO感度を上げないとシャッタースピードを速くできない。だいたいISO1600か3200、場合によってはISO6400以上にする必要が出てくる。照明の当たっていない場外乱闘を速いシャッタースピードで撮りたい場合はISO10000以上が必要かもしれない。

ISOを上げると暗いところでも撮れるがノイズが出て画質が落ちる。画質低下をどこまで許容できるかは人それぞれ。カメラの性能によっても大分違う。


twitterとかfacebookとかブログにアップしたい

撮った写真をSNSにアップするならスマホのカメラが最強。

Nikon D5300 のようにwifi通信ができるカメラも出てきている。あとは無線通信のアクセサリを使うのが一般的。NikonだとWU-1aとかWU-1bとか。もしくはEye-Fi Mobi等の無線機能のついたメモリを使う。あらかじめスマホやタブレットに専用アプリをインストールしておくと、転送ができる。撮ったと同時に全て転送するか、選んだ写真だけ転送するか選べたりするので、自分のスタイルに合わせて設定するといい。iPhoneやiPadを経由してSNSにアップロードする、という流れ。


Nikon WU-1a カメラと比べると結構小さい


無線通信ができなければ、パソコンやタブレットにデータを取り込んでからアップする。


トリミング前提でもいいかも

選手を追っかけまわして撮る場合、構図をビシッと決めるのは難しい。トリミング前提で適当に撮るのもいいと思う。



元の写真とトリミング後の写真。縦横の比率も変えている。
大きいサイズで写真を保存する設定にしておくと、トリミングもしやすい。


撮影マナーの話

プロレス撮影について、各団体からは興行での撮影ルールについて細かく示されることはあんまり無い。「動画の撮影は禁止だけど写真撮影はOK」ということがアナウンスされるだけ、というケースが多い。インターネットへの掲載の可否も説明が無いことが多い。現状は「撮影者のマナーに任せてる」というところだと思う。

マナーは時代によって変わるみたいで、その時々で空気を読みながら気をつける必要があるかも。

一般的な観戦マナーの他に、撮影に関するマナーにも注意が必要なんだけど、各団体から細かい撮影ルールが提示されることはあんまりない。守るべき撮影マナーもわかりづらい。

そこで、プロレス以外のスポーツやショーの撮影ルール・禁止事項の例を挙げる。

・撮影禁止(ゴルフ、体操等)
・フラッシュ使用の禁止
・他のお客にカメラを向ける等、迷惑行為の禁止
・三脚の禁止
・踏み台・脚立に上っての撮影禁止
・顔の移置よりカメラを上げての撮影禁止(東京ディズニーランドのショー等)
・長さが20cmを超える望遠レンズの禁止(鈴鹿サーキット)
・望遠レンズでの撮影禁止(なでしこリーグ)
・選手の体の一部のみの撮影禁止(ビーチバレー)
・落車等、異常時の撮影禁止(弥彦競輪場)
・写真の販売、メディアへの投稿、web等での公開禁止(弥彦競輪場)

以前のプロレス興行では、ゲストの芸能人の撮影は禁止されていたようだ(ハッスル)。

現在のプロレス興行のルールとは異なるが、プロレスの観戦マナー&撮影マナーを考える時に参考になるだろう。


最近はカメラの連写機能が上がったせいもあって、「高速連写はいいの?つなげたら動画になるからダメじゃないの?」なんて声も出てきた。例えばNikon1 V3 で 60コマ/秒で連写したら、周りの人はびっくりするだろう(余談だが、V3はシャッター音を無音にできる)。テニスの大会だと「連写禁止」の場合もあるがプロレスでの連写に関する撮影ルールが提示されることはまず無い。空気を読んで対応するしかないのが現状。



マナー以前の話だが、「撮影ルールを守る」という事にも注意してほしい。ルールを守らないカメラマンがいるためにプロレス会場での撮影が禁止されることも考えられる。

プロレス団体から提示される撮影ルールの例
・撮影一切禁止
・試合中の撮影禁止
・動画の撮影禁止
・撤収中・撤収作業後の撮影禁止

上記に加えて、撮影した写真のネット上での公開ルールが提示されることもある。


参考書籍

フォトコン別冊 水谷章人 デジタル時代のスポーツ写真テクニック (日本写真企画)
スポーツ写真入門 力の瞬間をとらえる 松葉谷勉 (美術出版社)
スナップ写真のルールとマナー 日本写真家協会編 (朝日新書)


おまけ : このページを作った理由

このページを作った理由は、プロレス観戦写真の撮り方解説ページを探していたけど無かったから。

プロレスの撮り方をググって出てくるのは価格.comの掲示板とかYahoo!知恵袋とかの質問サイト。プロレスの撮り方を質問してても、プロレス会場に行ったことの無い人が的外れな回答をしてたりする。何年も前の情報だったりして、現状と合わない回答になっていることもある。ただ、それらもとても参考になる。

ネットに限らず、いい加減なことを言ってる人は多い。このページの内容については、信じられる人は信じられる度合いだけ参考にして、プロレスを楽しむのがいいと思う。


「カメラ素人」の「プロレスファン」が「あんまりお金をかけず」にプロレス観戦写真を撮るにはどうしたらいいか、というアプローチの説明は少ない。自分はお金をかけずにプロレスを撮りたかった。

最大手の新日本プロレスでは、写真撮影OKや撮影した写真のSNSへの投稿OKをVTRで明言しているし、他の団体でも「試合では選手を応援したり写真を撮ったりして楽しんでください」なんて言ってるところもある。今後もプロレス興行にカメラを持ち込む人は増えるだろう。

「カメラ素人」の「プロレスファン」が観客席からプロレスを撮ることについて、有用な情報を掲載していこうと思うが、このページの内容も古くなると使えなくなる可能性が高いので注意。

最近の更新履歴
2015/09/13 「参考書籍」追加
2015/05/06 「撮影マナーの話」にプロレス団体から提示される撮影ルールの例を追加
2015/01/13 「ポートレート的な写真の撮り方」を追加
2014/11/03 「色々なプロレス写真」「手ブレを防ぐ撮り方」を追加
2014/10/02 「屋外での興行」を追記
2014/09/28 「単焦点レンズ」について追記
2014/07/21 「撮影マナーの話」追加